学生の頃、このカンファレンス動画を見て非常に衝撃を受け、強く印象に残っています。
この動画は業界人に向けて発表するカンファレンスの動画になっていますのでだいぶ掘り下げてこまかーーーい現実的な部分を話しています。
吉田さんの武勇伝的なやつで、2010年の12月10日にFF14プロジェクトにアサインされて当時の絶望から現在(当時2012年)に至るまで、が語られています。
数年前ですが、最近でも掘り返されていてしくじり先生で登場してましたよね。
今回、ブルプロのサービス終了という時事ネタを見て改めてこの動画で語られていた内容と、ブルプロが辿ってきた道のりを比較したくなり、そのためにこの記事を書きました。
性格が悪いかもしれないが…何かを考えてまとめる作業が好きな癖があるので勝手にやっている。
1.FF14の概要を簡単に説明
“10年に一度のクソゲー“と呼ばれた旧FF14
今では知らない人も結構いると思うので概要を説明するとFF14は1度サービスを終了しています。(こちらを旧FF14と呼んでいる)
理由は超単純で、“めっちゃクソゲーだった”から
吉田さんは途中から旧FF14のプロジェクトに参加し、状況を把握してビジネス的な問題を抱えつつもなんとかユーザーとの信頼関係を大事にしようとした結果
一旦旧FF14はサービスを継続させつつ、も最終的にはサービスを終了させていく段取りで新生FF14を開発する決断をします。
あまりにもユーザーも開発もネガティブな雰囲気がまん延していて、単純に作り直します!皆さんごめんなさい!だけでは大復活は無いだろうと思い、とにかくユーザーの信頼を取り戻そうというのを第一に考えた結果
旧FF14は“隕石が落ちてきて世界が滅ぶ”というエンディングを迎えるというストーリーを描きました。
新生FF14はその世界の数年後で、過去に大災害があったんじゃよ…という風に語られています。
このようにゲーム的な繋がりを維持して、ユーザーに最大限気を使ったアイデアを旧FF14で実現しました。↓エンディング
ブルプロもこういうのやってみたら…?
ちなみにサービス終了日にかけてどんどん隕石が地表に近づいてくるという演出が為されていた
当時のユーザーがyoutubeに動画が残してくれてたりするので見てみると面白いと思う。
ユーザーのことをもし大事に思うなら、信頼を回復したいと思うなら何かこういった粋な演出をすべきなんじゃないだろうか…普通にサービス終了してしまうのだろうか
旧で遊んでいたプレイヤーと新生で始めたプレイヤーでオープニングが違う
旧FF14からのプレイヤーはオープニングで”とある人が”魔法使ってその影響で未来に飛ばされてしまい、光の柱から知らない場所へ…ここはどこ???という感じで新生FF14の物語が始まります。
因みに5年後らしい。
新生から始めたプレイヤーは最初は馬車や船に乗っているところから新生での冒険が始まります。
過去のクソゲー版FF14を遊んでくれていたユーザーを大事にしつつも新規プレイヤーにも自然な流れを提供するという滅茶苦茶気を使って演出が序盤に入っている。
因みに旧FF14は”根性版”と呼ばれていた
2.本題に入りますと…
吉田「おそらく役に立たない発表」”発売後にゲームを作り直すことはありえない”
「多分、この話はあんまり役に立たないかもしれません」と軽く前置きをしています。
それは以下の通りで、
ゲーム業界では、1度発売した後の作品を作り直すということは全く異例で、通常そんなことはしないということ。そのため「多分、この話はあんまり役に立たないかもしれません」と前置きをした感じです。
実際問題確かに、発売後のタイトルが酷評された後に神ゲーになって戻ってきたことなんて1度も見たことが無い気がする…あったとしても小規模なゲームなんじゃないかな
リリース当初の圧倒的絶望感
動画の14分30秒あたりからスライドの内容を喋っているのが見れます。
吉田さんが引き継いだ当時最初から大炎上状態だったそうで…
当時はまだ下っ端だったということで恐らく敗戦処理的な意味でアサインされた説が噂されているが本当かどうかはわからん…
スライドの通り
- ゲームの出来が悪いとメディアからもユーザーからも言われる
- βテストをやったのに何も変わっておらず意見を無視された、裏切られたと言われる。
- FFシリーズなのにこれ!?と失望と落胆のコメントの嵐。
- もうダメだろうFFは終わったというあきらめの声
- それでも”何とかしてほしい”というユーザーの嘆きと期待
あれ…これどっかで見たような展開…既視感がありますね???
信頼回復とは非常にシビアであるということ
既に記述していますが、吉田さんは大炎上中の最中に旧FF14のプロジェクトにアサインされています。
なので吉田さんは“自分の責任ではないし…”と他人事として考えることもできたと思います
が!それでも“何とかしたい”という思いがかなり強かった故にそういったことはあまり考えなかったんじゃないかなと思います。
だからこそスライドの通りシビアに現実を受け止めたんだと思います。
動画の16:30ぐらいからの内容です。
まずスライドから書かれている言葉を見るだけでわかると思いますが、
“ディレクター”として開発のトップに立つ上で
ゲームが好きで、ゲームが与える感情や体験を理解していることが大前提であり、そのうえで作り手である立場にいることをよーーーーーーーーーく理解しているように見えます。
このあたりでは非常に冷静に現状を分析してどうしたらいいんだろうとものすごく考えたというのが語られています。
そしてがむしゃらに走るべきではなく、1度立ち止まって着地点を見つけるという算段の元
とにかく冷静にに行動できたのは本当にすごいと思う。
普通は鬱になったりするんじゃないかな…
信頼回復のシビアさを理解しているなら安易な発言はしないと思う
まぁ、まず吉田さんの状況と違って“大失敗はまだ発生してない”という状況だったので正直ちょっと余裕があり、慢心があったように思う。
またブルプロユーザーの一部からも「期待してる!」という声が正直相当数はあったと思うので危機感が全く伝わっていなかったようにも当時は思っていました。
スリーソード達の失言は膨大にありますが、一部だけ見てもキツい
このインタビューの時点では2回目のユーザーテスト(cbt)が終わった後だったので相当な数のフィードバックを得ていたと思うのだが…非常に軽く受け止めているように見える。
逆説的に言えば…の部分はネタで言ったのかわからないけど、既に信頼を失いはじめている最中で迂闊な発言をしたら不信に思われるし、反感を買うにきまっている…
後半の説明では何か言い訳じみたような説明をしていて、ユーザーにとってはそんなの知らん、なんとかしろという話である。
というか内容的に”なんでその仕様でOK出したの?”というレベルである…
3.ゴールを設定する
MMORPGとして必要な要素を理解する
吉田「MMORPGという特殊なジャンルですので、これは今の世界市場を見たときにどういったゲームである必要があるか、べき論でゴールを再設定しました。(現状のゲームの出来栄えは一旦置いておく)」
プレイヤーとの対話方法を考える
現状のゲームの出来栄えは一旦置いて、プレイヤーの皆様とMMORPGを運営していく上でどういったコミュニケーションを採用すればいいのか最初に考えました。
適切なビジネススキームを考える
FF14を“長期的に運営する”上で、今の世代にどういった方法でビジネス展開をするのが適切なのかを改めて考え直した。
長期運用するために必要な技術を準備する
“長期的に運営する”上で、どういった技術があればいいのかを理解する。また、知らないわからないことも多いのでその都度、知識を身に着けていくようにした。
正直ふつーに、相当しっかり考えているなぁ…と感心しかないのと同時に
大規模なゲームを作るなら”これぐらい深く考えるのは当たり前だよなー”と思ってしまった。
まず計画の時点で相当設計を考える必要があるので、担当した開発者であれば思慮深さは垣間見えるところがあると思うのだが…スリーソード達の放送ではそういった感じは正直見えなかった…
多分本当にそんなに考えてなかったんだと思う。
4.ゴールにたどり着くために問題を洗い出す
発言内容を要約すると
「何でもかんでも問題だと言って修正したところでそれがゴールに向かっているのかはわからないので、ゴールを見据えたうえで現在地との乖離はどういった理由で発生しているのかをよく理解した上でその間にある問題を重点的に解決していく」
という前提があり、具体例としてスライドに出しています。
クレジットカード以外の決済方法は?
特に「クレジットカード以外の決済方法は?」に関してですが、グローバル展開をするうえで
“全ての国でクレジットカードが全世帯に普及しているわけではないので各国の文化やスタイルに合わせて決済方法を用意してあげる必要がある”と発言しています。
例えば、ドイツでは老舗のお店が多くチェーン店のようなものが少ないのでクレジットカードの普及率が低い等がある…ということでした。
これについては、“企業のやり方に合わせてもらう”ではなく“顧客に合わせて提供する”という姿勢が読み取れるので考え方的に素晴らしいと思いました。というか至極全うである。
ビジネスなんだからそこまで考えるのは当然だろ!と思う人もいるかもしれないが…
ブルプロの運営スタイルは“お前ら財布出して”みたいな感じで支払い方法も含めて課金の内容も不親切でもうなんか顧客なんか眼中にない感をすごい感じていた…
難にせよ。ブルプロは
“お客さんのことを考えたらこれがいいだろうという視点が圧倒的に足りなかった”
下記記事では予想よりライトユーザーが多かったな~と反省しているインタビューですが“長期的に運営する”という視点があったならある程度常識的な範囲で客層は幅広く見ておくべきだったと思いますけどね…
理想の会員数は?
吉田さんは“会員数によって投資される金額が決まってくる”と発言している。
下記の記事にあるスリーソード達の発言では、「予算は青天井っぽいこと言われました」という風に言っているがどう考えてももっとシビアに考えるべきだったと思う…
5.問題点をあげるだけで絶望する
吉田「気づいた問題の1つがとてつもなく大きな問題で、この1点だけ見てももうどうにもならないんじゃないか???という感情が出たとしてもまずは最後まで問題をピックアップしていく」
吉田「例えば、1時間ごとに100個問題を箇条書きにして、1日10時間働くとして10日で1万点ぐらい問題はだせる。とにかく数に落とし込み、やってもいないし、計画もしてないのに絶望しないようにした。とにかく冷静に事実は変わらないので最後までピックアップしていく」
難にせよ根っこは根性である。
ただセンスもかなり求められると思います。問題の整理整頓、カテゴライズとか…
これほどの根性でも失敗するか、成功するかは運であり、多分やってる最中に何回もこれ無理じゃね?と正直思ったと思う。
6.全体を理解したらようやく仲間を集める
最終的に最初は6人ぐらいでスタートしたらしい。
テクノロジーを任せられるプロフェッショナル
できないものはできない、できるものはできる、それは危険、リスクが高すぎるなど技術的な部分を正確に冷静にジャッジできる人が必要でこれは絶対に必要と発言している
スクエニにはたまたまテクノロジー推進部という部門があったのでこれを探すのはそんなに困らなかったらしい(橋本さん)
バトルシステムのスペシャリスト/インターフェースのスペシャリスト
ディレクターの考える内容が時代のニーズに合っているか?実現可能なのか?またUIなどの設計、遊びに関する客観的評価を下せるスペシャリストが必要
吉田自身は“自分の考えていることが正解ではない可能性が常にある”と捉えている
現状の問題点を最も把握しているスタッフ
今回は作り直すという特殊な事例なのでそういったスタッフが必ず必要だった。
この時に最も重要なのは、誰のせいでこうなった?何故こうなったのか?のか責任追及するのは全てが終わってからすればよくて冷静に問題点を伝えてもらったとのこと。
「私一人が問題点をまとめ上げてそれに対処してもらっても客観性が無いのでゴールに向かうことが出来ているのかはわからないのでどうしても客観性が必要」
とまとめている。
7.仲間と一緒に問題に立ち向かう
仲間と共に、ゴールへ向かうにあたって1つ1つの問題点の正確性と妥当性を判断していった。
グラフィックスの方向性は妥当か?
例えばMMORPGなのでたくさんのキャラクターを表示しなければいけない。1つのキャラクターだけに固執していると、両方の問題が達成できない瞬間が絶対に出てくる。
ビジネス的に見てハイエンドPCだけに提供すると自分たちでお客様を機会損失させてしまうのでやはりどこかで妥当なラインを決める必要がある。
そのための客観的な評価をみんなで行った
バトルシステムは時代のニーズに合うのか?
テンポは早すぎないか?遅すぎないか?アクション性がありすぎて敷居が高いんじゃないか、逆に無さ過ぎなんじゃないか?
というのを客観的に判断した。
8.本当に間違ってないのか振り返る
問題から逃げるな!!!! これはスリーソードに1番言いたい。
実現不可能なことはないか徹底的に確認する
あたりまえだよなぁ…?
感覚論「だけ」で制作しようとしていないか?
吉田「よくあるのが、僕も若いころありましたが先輩にコレ作ってと言われてだしたら、”なんか違うんだよなぁ”と言われた」
このような感覚論をできるだけ排除する。
つまり何をするにしてもなんでこれを作るのか?と理由を考えて欲しいということ
これが無いと責任感が薄れたり、当事者意識が小さくなるので意見が言えなくなったりいろんな弊害が生まれる。
ビジネスとして成り立つのかどうか
成り立ちましたか…?
吉田「よくあるのがあとで何とかなるという奴ですが、まぁ何ともならないですね」
9.問題の解決方法を仲間と一緒に考える
ブルプロではcbtの後におよそ2年間作り直したと言っていたが…
私はこの話を知っていたので正式サービスの様子を見て驚いた。ほぼ、変わっていないのである。なので正直舐めてると思った。
10.客観的な評価をしてくれる仲間と共に何をするか決めた
とにかく手堅い客観的な判断をしてくれるスペシャリストの意見を重要視して何を問題として捉えて何を修正するのかというのを長期的に運営することを考えて検討した
11.結論は出たが…新作作った方が早くない?
初めにこの講演はあんまり役に立たないと発言していたがそれがここでわかる。
問題点が多すぎる場合は
結局作り直しになってしまい、もはや新作じゃね?となってしまうからである
12.FF14はなんで作り直す決断をしたのか?
これらに関しては、FFというブランドが掛かっているのでブルプロ運営に言うのはちょっとずるいかもしれないが…
“FF14という部分に拘る理由は、信頼回復を最も重要視したからということ”
因みに、しくじり先生の中で語っていましたが、社長にユーザーに対して謝罪してほしいと直談判したらしく、今はもう消えてしまっていますが公式サイトに謝罪文が投稿されていた。
これによってスクウェア・エニックスの方針としても”売上よりも信頼回復の方が重要なプロジェクトである”という風に認識を現場と揃えたということでした。
昨今は、「ゲーム会社は、商売なんだし良いゲームにしてほしいならまずはユーザーがお金を出すべきじゃん!」となぜかユーザー同士で対立を煽ったりしているのを見かけるが
現場のスタッフ、会社側はそんなに冷酷ではないです。(これは実体験も相まってそう信じているが…)
少なくとも現場のスタッフの殆どが元ユーザーだったりします。
なので間違った判断をしているという認識が開発のトップとして”ある場合”はそれなりに誠意のある態度をとってくれると私は思っています。
例えいろんな制約があったとしても、直接謝罪の一言を動画で出したり、何か問い合わせがあれば即レスしたり、わからなければわからないので調べてきますごめんなさい!と立場に囚われずに謝罪できたり、そういう小さな部分でできると思うし、そういうところから本音が見えてしまう
舐めすぎだとおもう
13.”信頼回復”を目標に作り直しがスタートした
ここまでどれほど苦労して、真剣に労力を割いて作り直しを検討したかわかると思いますが..
“無理とは言わないが、そんなに簡単に判断できることではない”
ということである。
なのでブルプロの運営スタッフの能力や、バンダイナムコの企業体質を見ていると
無理じゃね?と思っている
まず本当に申し訳ないと思っているんだろうか疑問
14.サービス終了するゲームをどんな風に楽しんでもらうか
普通に話を聞いてるだけでも面白い。
サービス終了をしてしまうゲームなので隕石が落下して世界が滅ぶ…それをライブゲームの特徴を生かしてだんだん隕石が近づいてくるアップデートを行っていくということでした。
そして最終的には単純にそれだけだと面白くないので、実は隕石は拘束具であり、中から封印されていたバハムートが出てきて世界は滅ぶという演出を加えたということでした。
終わり
ここまでもし全部読まれていたならなんとなーく温度感が分かったと思うのですが、
“お金がかかりすぎて回収できないから”という問題点以外にも単純に長期的な見通しが立っておらず、場当たり的な対応を長期にわたって繰り返してしまったので復活、継続させてもサービス品質的に良い方向に行かなさそうというのが見透かされた結果がかなり大きいと思う。
時間とお金さえかければなんとかなります!という見通しがあるなら畳むのも大変なぐらい大きな物なので普通は投資は続けると思うが…
申し訳ないのですが、ff14は紅蓮のリベレータ4.3ぐらいからやってないです…
吉田すまん…復帰は考え中です。
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